ミニトマトを。
自分が勤務している、(小さな)施設では、利用者さんは、提供される食事を摂ります。
献立は栄養士が考えたもので、食材は用意されています。
日勤の者が昼と夜の食事を。夜勤の者が朝食を作ります。
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予め決められた献立に合わせた、食材は用意されていると書きました。
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ある日の朝の献立は、焼き魚、白菜のおひたし(または浅漬け)、すりおろした山芋、みそ汁、そして白飯。
ところが、白菜がない、あるいは山芋がない、というケースがあります。
受注、発注の手違いや、季節的なこと…。
長芋がないとなると、やむを得ずメニューは3品から2品になります。
メニューが減ったからといって、誰かが責任を問われることはなく、“仕方がない”ということとなります。
この場合は、食材が足りないというケースです。
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一方では逆のケースもあります。
それは、食材が余るというケース。
献立は、一人当たりの量が決められているのですが、野菜には余りが出ます。
人参にしろ、大根にしろ…まぁ何にしてもです。
余った野菜は、みそ汁やスープの具材として活用することになっています。
が、当然限界があります。
いくら“具沢山のみそ汁”だとしても、そうそう活用しきれるものではありません。
先に書いたある日のメニューの場合、余りの野菜を活用出来るのは、みそ汁としてです。
大葉、みょうがをはじめ、葉物はどんどん傷み、やがては廃棄されます。
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意外に思われる方もいるかも知れませんが、余る食材にミニトマトがあります。
特に献立のメニューで、その名を轟かせる食材ではありません。添えものです。
揚げ物やサラダに登場するそれ。
冷蔵庫には、ややしなびてきたミニトマトと、新鮮なミニトマトがそれぞれ見えます。
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そのミニトマトも、例えば「飽きた」、「生野菜か嫌い」、「歯が悪いから」という理由で手をつけないという方も少なくありません。
せっかく提供された新鮮なミニトマトも、
口へは入らずに捨てられてゆくことはよく目にする光景です。
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ある日、そうしたミニトマトを、マリネにしてはどうかと思いつきました。
もちろん、そんな風にミニトマトをわざわざマリネにしているスタッフはいませんし、系列の施設でもいません。
利用者さん達からすると、普段食べることはもちろん、目にすることない一品です。
人生の中でも初めての味かも知れません。
どう思いますか?
無謀ですよね。自分でもそう思います。
そもそも、しなくても良いことなのですから。
しかし、決めた以上、やります。
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ヘタをとり、反対側にプチッと楊枝を刺したミニトマト。
沸騰したお湯にくぐらすこと、10数秒。
冷水に取ると、この通り。
するりと皮を剥き、
マリネ液に漬けます。
(マリネ液と言っても、砂糖と酢が1対1で塩少々です。 これはいわゆるすし酢の割合になります)
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提供される側の人というのは、様々な理由…先天的、後天的に心や体の自由の利かない人たちです。中には言葉を持たない方もいます。
そうした方々に、酢の香りが漂う、未知の味は、受け入れられるのでしょうか。
↓実際の、現場での画像がこちら。
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結果は、何事なかったかのように、みなの口に消えました。
不思議ですよね。
これだけのことで、ミニトマトを誰もかれも食べてしまえるんですから。
不思議だと思いました。
そして、本当に嬉しかったです。
(盛りつけた画像も載せてみますね。)








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